Toledo

晴れ


前にも書いたように、スペインの朝は本当にゆっくりです。早起きが苦手な私としては、気分的に楽ではありますが、今日のように少し早めに動き出さなくてはならない日はやや不便です。ホテルの朝食は7:30からですが、今日は、8:50の列車に乗らなくてはならないので、余裕をもってRenfeの駅に着くには食べていては間に合いません。
そこで、前日にStarbucksで買っておいたマフィン等を部屋で食べながら支度をし、出発しました。
Sol駅まで歩いて地下鉄でAtocha Renfe駅まで。スペインの地下鉄の駅は、スリが多いと言われ、やや緊張しますが、ParisやLondonに比べても明るくてキレイな気がして、実際には少し気が楽な印象です。
余談ですが、駅に限らず、Madridは街全体がヨーロッパの他都市と比べてもきれいに保たれている気がします。店も、店で借りるトイレも比較的きれい。海外の洋服屋などに行くと、服がハンガーから落ちていたり、棚の上でごちゃごちゃに丸めて置いてあったり、ということが珍しくはないのですが、スペインでは店員が日本ほどではないにしても、たたみ直して整理しています。また街中でも、店頭を掃除している人をしばしば見かけます。こういう点はとても好感が持てますね。


地下鉄の駅と国鉄Renfeの駅は繋がっていて、すぐに分かったのですが、Toledo行きの乗り場が分からずinformationの人に聞くと分かりやすく教えてくれました。チケットは日本で予約してあったので、プリントアウトしてきたバーコードをスキャンしてもらい、荷物を金属探知機に通して待合へ。Renfeは、ヨーロッパの他鉄道と同様、発車時刻が近づかないと乗り場が何番線かが分かりません。それでもしばらくすると電光掲示板に出るのと同時に放送がスペイン語・英語で入りました。意外に親切。すぐに座席も分かって、Toledoへ出発しました。
Toledoまでは、ほとんど建物のない、緩やかな起伏のある野原の中を30分ほど走ると到着します。途中、遺跡のようなものが少しだけ見えたり、到着直前には牛が放牧されているのが見えたりしました。
駅に着くと、バスが旧市街まで出ているはずなのですが、バス停が分からない。なんとなく人についていくと、バスが止まっていたので、とりあえずPlaza de Zocodoverに行くかと運転手さんに聞いてみると、行くとの返事。ラッキー!
降り場も良く分からなかったのですが、城壁の脇のバス停でほとんどの人が降りるので、聞いてみるとここがPlaza de Zocodoverだとのこと。でも降りたところは、どう見ても広場ではなく、まだ旧市街に入っていない城壁の外。そこから、またまたなんとなく人に付いていきながら、エスカレーターを上がっていくと、広場に出ました。なんともいい加減な到着の仕方で、正しい行き方だったのかも分からなければ、もう一度行っても多分同じ道は辿れないような気がします(^^;

Zoco Tren


その後、11:00出発のZoco Trenという汽車の形をした車で街一周のツアー。坂道を上がったり下ったりしながら、50分ほどかけて街の外周を一周します。日本語での音声ガイドもあり、Toledoの歴史などが簡単に分かるようになっています。


古いものではローマ時代の遺跡や、その後の西ゴート王国時代の建造物も残り、またイスラム教徒に征服され、その後キリスト教徒が取り戻してからも、キリスト教徒、イスラム教徒、ユダヤ教徒が共存したという歴史を反映して、色々な様式の建物が残っています。異なる宗教のものがすぐ隣同士にに存在するという意味では、エルサレムのような不思議な街です。

Catedral de Toledo


ツアーが終わってから、Catedral de Toledoに行きました。スペインカトリックの総本山だそうで、世界で4番目に大きい聖堂とのこと。内陣の豪華さは驚くほどでした。


Catedralの後は、Plaza de Zocodoverに面したCaféにてランチ。サラダとエビのフリッタ、そしてラザニアをシェアしました。

Inglesia de Santo Tome


少し元気を取り戻して、今度はユダヤ人地区の方に迷路のような石畳の坂道を歩いていきました。Inglesia de Santo Tomeは教会の脇にある小さな礼拝堂のようなところでEl Grecoの「オルガス伯の埋葬」の1作品だけを鑑賞するというつくり。

El Greco Museum

その後、急な坂を下ってEl Greco Museumへ到着しました。ここはEl Grecoが住んでいたと言われた邸宅を、20世紀になってからある貴族が購入し、El Grecoの時代の家屋らしく復元したところに、彼の作品を集めて展示しています。ここで、十二使徒のシリーズを初めて観たのですが、El Grecoに対する印象が随分と変わりました。
というのも、El Grecoの作品は、色が暗めで陰影が濃く、過度にドラマチックな印象で、あまり好きな作風ではありませんでした。でも、この十二使徒のシリーズは、一人一人を肖像画のように描いたものですが、驚くほどに個性豊かに表現されていて、きっともっとキリスト教に対する知識があったら、もっと興味深く理解できただろうなと思いました。なかなか見ごたえがあり、良かったです。
加えて、今回のように一人の作家に集中して鑑賞することも初めてだったので、面白かったという面はあると思います。ToledoはEl Grecoを見たくて選んだ訪問地ではなく、Madridから日帰りできる世界遺産だったというだけなのですが、思いがけず、El Grecoという作家を深く知ることとなりました。これまで、暗くて何とも言えない青白さ、茶色がかった作品だと思っていた彼の作品も、今回Toledoを訪ねたら、家々の壁や屋根の薄茶色(恐らくこの地域の土の色かと)、木々や植物の色褪せたような緑がまさにEl Grecoの作品の色で納得しました。
El Grecoは、フェリペ2世から嫌われ宮廷画家になり損ねてからこのToledoに移住し、亡くなるまでここで過ごしたとか。坂道だらけの不便な街ですが、彼の時代には金持ちの別荘地として栄えていたそう。そのコミュニティにもある程度受け入れられ、自身の信仰心に沿って描きたい作品を描いていたとのことなので、それなりに幸せな生活だったのでしょう。


さて、歩いてばかりになりがちな私の海外旅行ですが、Toledoは石畳のでこぼこ坂道で本当に疲れます。
Museum前のCaféで休憩しながら、この後の相談です。相談と言っても、こんな細い道ばかりの古い街では、タクシーなどもほとんどなく、結局歩くことに。疲れますが、少なくとも私は結構楽しいです。めいちゃんはウンザリしていたようですが。。。

Hospital Tavera

でも、次の目的地、Hospital Taveraは結果的にはめいちゃんが「Toledoで一番よかった」と評価していました。人が誰もいないので、最初は入り口がわからなかったのですが、事務室らしきところを覗くと、女の人が出てきてくれて、チケットを売ってくれました。入場者は本当に私たちだけだったようで、その後、別の男の人が出てきて、チャペルの扉の鍵を開け、中の電気をつけてくれました。シーズンオフではあるし、時間もやや遅めではあったのですが、それにしても誰もいないとは。。。

でも、結果的にはそのおかげでチャペルの静寂を感じることができたし、その中で、El Grecoの作品「キリストの洗礼」「聖家族」を2つ鑑賞できました。


見終わって、タクシーで駅まで。到着時はあまりちゃんと見ていませんでしたが、この駅も教会のような美しい造りです。

ここで、小一時間待ってRenfeでMadridに戻りました。帰りは前後の列車も含めて満席。事前に予約しておいてよかったです。

Madridに戻ってからは、2日目に閉まっていて入れなかったLa Casa del Abueloにて夕食をとりました。ここは、エビのアヒージョが名物だそう。実際に頼んでみると、新鮮でプリプリとしていてとても美味しかったです。これにチーズ(これは私は好きでしたが、クセがあってめいちゃんはあまり好きではなかったとのこと)とサラダとパンで結構満腹です。
そして、今日もStarbucksで翌朝の朝食購入してホテルに戻りました。